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2026.03.19
コラム

法人設立に関わる税理士が感じる注意点

第2回 出資金と会社資金の管理

前回のコラムでは、会社設立時の

・議決権割合
・決算日の考え方

についてお話しました。

今回は、会社設立後の実務の中で比較的よく見かける

出資金と会社資金の管理

についてお話ししたいと思います。

最近は、マネーフォワードやfreeeなどのサービスを利用することで、比較的簡単に会社設立ができるようになりました。

名古屋や岡崎などでも、個人事業から法人化される方や、新たに会社を設立される方が増えている印象があります。

会社設立のハードルが下がったこと自体は良いことだと思いますが、実務の現場では

会社設立後の資金管理について十分理解されないまま運営されているケース

に出会うことがあります。


会社のお金は「会社のもの」

会社は、たとえ株主が100%同じ人であっても

社長とは別の人格(法人)

として扱われます。

「法人格」と言われてもイメージしにくいかもしれませんが、簡単に言えば

経営者とは別に新しい人間が生まれたようなもの

です。

もちろん法律上の話ですが、そのため会社は一つの「人」として法律の規定を受けることになります。

例えば、個人にも法人にも住民税が課されますが、これは

個人と会社がそれぞれ別の人格として扱われているため

です。

そのため、会社のお金は

社長個人のお金とは別のもの

として管理する必要があります。

場合によっては、会社のお金を個人的に使うことが

横領などの問題につながる可能性もある

という点は理解しておく必要があります。


実務で見かけた事例

実際の実務でも、資金管理に関するトラブルに出会うことがあります。

例えば、決算時に関与した法人では、登記簿上は

資本金100万円

となっていました。

ところが帳簿を確認すると、資本金が計上されていません。

すぐにその点をご指摘したところ

「資本金は形だけのものだと思っていました。知らなかったです」

というご説明でした。

もちろん会社設立時の資本金は、会社の資金として管理されるべきものです。
そのため法人口座への入金をお願いしましたが、すでに資金を用意できない状態になっていました。

また別のケースでは

・登記簿上の資本金 500万円
・会計帳簿上の現金 350万円

という状態になっていました。

元帳を確認しても

資本金を法人口座へ移した形跡が見当たりません。

さらに実際の現金残高を確認すると、帳簿上の350万円すら存在していない状況でした。

帳簿の状況からすると

社長個人として資金が使われた可能性が高いと推察される状態

でした。


会社設立サービスと実務の違い

このようなケースは、マネーフォワードやfreeeなどの会社設立サービスを利用した場合に見かけることがあります。

もちろん、これらのサービス自体が悪いわけではありません。

ただし、これらのサービスは基本的に

登記手続きを行うこと

を目的としているものです。

そのため

・会社設立後の資金管理
・会計処理
・法人口座の運用

といった実務まで細かく説明されるものではない場合もあります。

会社設立サービスと会社運営の実務は別のものだという点は、あらかじめ理解しておく必要があると感じています。


会社設立後にまずやること

会社設立後にはさまざまな手続きが発生します。

税務の届出は税理士が対応することができますし、社会保険の届出は社会保険労務士が対応することができます。

一方で

・法人口座の開設
・法人名義への変更

などは

会社の経営者ご本人でしか対応できない手続き

も多くあります。

そのため会社設立後には

① 法人口座を開設する
② 事業用クレジットカードを作る
③ 出資金を法人口座へ移す

といった対応を行うことが重要になります。

これらの事務手続きこそ

会社の経営者にしかできない仕事

です。

その上で、税務や社会保険などの専門的な届出については専門家に任せることで、提出漏れなどのリスクを減らすことにもつながります。


最後に

今回ご紹介した事例はいずれも、当事務所が決算のみのスポット契約として関与した法人での出来事です。

会社設立当初から資金管理について指導できなかった点については、当事務所としても反省すべき点があると感じています。

なお、これらの法人についてはそのほかの事情もあり、現在は当事務所との関与は終了しているため、その後どのように対応されたかまでは把握していません。

こうした経験もあり、当事務所では

基本的に顧問契約を前提とした関与

とさせていただいております。

会社設立直後は、資金管理や会計処理のルールを整える非常に重要な時期です。

その段階から専門家が関与することで、後から問題が発生するリスクを減らすことができると考えています。


免責事項

本コラムは、税務実務の観点から会社設立に関する一般的な注意点を紹介するものです。
個別の事情によって適切な対応は異なる場合がありますので、具体的な判断については専門家へご相談ください。

また、本記事の内容は掲載時点の一般的な情報をもとに作成しており、制度変更等により内容が変更される可能性があります。