COLUMN
コラム
収受印廃止で不安なあなたへ!法人設立後にすぐ出すべき税務署への届出と電子申請のすすめ|開業・創業編4
~提出漏れを防ぐための完全ガイド~
「法人設立の届出は税務署に提出すればOK」――そう思っていませんか?
実は、2025年1月以降、税務署での収受印(受付印)押印制度が廃止されました。これにより、紙で提出しても控えが手元に残らず、「ちゃんと届いたか確認できない」「提出した証明がない」といった不安の声が増えています。
そこで本記事では、収受印がもらえない時代でも安心して法人運営を始められるよう、設立後すぐに提出すべき税務署への届出と、その提出期限をまとめました。
特に、提出履歴が明確に残る”電子申請(e-Tax)”のメリットについても解説します。初めて法人を設立された方でも理解できるよう、書類ごとの重要ポイントもわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
なぜ今、電子申請が基本になったのか?
令和7年1月以降、税務署での収受印(受付印)の押印制度が完全に廃止されました。
これは、紙で提出しても控えが返ってこないことを意味します。提出したという証拠が手元に残らないため、提出漏れに気づきにくくなるだけでなく、「提出したはずなのに、税務署に届いていなかった」といったトラブルが発生する可能性も否定できません。
こうしたリスクを回避し、提出状況を確実に把握するためにも、”電子申請(e-Tax)”の活用をおすすめします。電子申請であれば、提出履歴がデータとして明確に残るため、いつ、何を提出したかが一目で確認でき、安心です。
提出を忘れると1年間の損失になることも
税務署への届出には、「設立後3か月以内」や「決算日まで」といった提出期限が設けられています。
これらの期限を逃してしまうと、1年間、制度上の恩恵を受けられなくなることがあります。
たとえば、後述する「青色申告承認申請書」の提出が遅れると、さまざまな節税メリットを享受できなくなり、結果として納税額が増えてしまうことになります。
実際に、設立直後であれば間に合ったにもかかわらず、ご自身で手続きを試みた結果、期限に間に合わずにお問い合わせいただくケースも少なくありません。制度のメリットを最大限に活かすためにも、早めの対応が非常に重要です。
法人設立後に提出すべき主要な届出と期限
ここからは、法人設立後すぐに提出すべき代表的な届出を、提出期限とあわせて解説します。
1. 法人設立届出書(国税・地方税)
- 提出先: 税務署、都道府県、市区町村
- 提出期限: 設立日から2か月以内
- ポイント:
- 会社の存在を知らせる、最も基本的な届出です。
- 国税(税務署)だけでなく、地方税(都道府県、市区町村)にも提出が必要です。
2. 青色申告承認申請書
- 提出先: 税務署
- 提出期限: 設立日から3か月以内、または第1期決算日のいずれか早い日
- ポイント:
- 「欠損金の繰越控除」など、さまざまな節税メリットを受けるために必須の届出です。
- これを提出しないと、青色申告ができず、税制上の優遇措置が受けられません。「出し忘れたら、損」になる重要な書類です。
- 欠損金の繰越控除とは:赤字が出た場合に、その金額を最大10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度です。
3. 給与支払事業者の届出書
- 提出先: 税務署
- 提出期限: 給与の支払いを開始する日まで
- ポイント:
- 会社として誰かに給与を支払うとき、源泉所得税の納付義務が発生します。その管理の開始を届け出る書類です。
- 役員報酬を支払う場合、従業員がいなくても提出が必要です。
- 提出漏れを防ぐため、法人設立届と同じタイミングで提出することが一般的です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 提出先: 税務署
- 提出期限: 特に定めなし(ただし制度利用前に提出が必要)
- ポイント:
- 毎月の納付義務を、年2回(7月と翌年1月)にまとめられる制度です。
- 中小企業にとっては、納付漏れを防ぎやすいため非常に実用的です。
- お給料の支給がない法人でも、源泉徴収義務者となるため、源泉所得税の納付がゼロ円でも納付書の提出義務があります。そのため、従業員数等の条件に該当する方は提出をおすすめします。
5. インボイス発行事業者の登録申請書
- 提出先: 税務署
- 提出期限: 課税開始日の属する月の前月末まで(特例あり)
- ポイント:
- インボイス(適格請求書)を発行できるようにする制度です。免税事業者であっても登録すれば、取引先からの信頼確保につながります。
e-Taxでの提出方法と注意点
ご自身で電子申請を行う場合は、以下の点に注意が必要です。
- 利用者IDとパスワードの保管:
- e-Taxでは「利用者識別番号と暗証番号」、eLTAXでは「利用者IDとパスワード」が必要です。これらの情報は、必ず控えを取って大切に保管してください。
- ソフトと電子証明書:
- 会計ソフトによっては、税務届出書の作成はできても、電子申請に対応していない場合があります。
- また、電子申請には電子証明書の取得と登録が必要な場合もあります。
- 紙での提出は郵送記録を:
- やむを得ず紙で提出する場合は、必ず提出日の記録を取っておきましょう。郵送の場合は簡易書留などを利用し、その記録を控えとして保管してください。
収受印がなくても安心!提出代行プランのご案内
煩雑な手続きに不安がある方、確実に提出履歴を残したい方は、ぜひ当事務所の提出代行サービスをご利用ください。
お客様にご準備いただくのは、定款と履歴事項全部証明書のコピー、そして簡単なアンケートにご回答いただくだけです。あとは当事務所がすべての手続きを代行いたします。
スポット対応のご案内(電子申請・控えデータ付き)
当事務所では、以下の届出をスポット報酬 税抜2万円にて電子申請代行いたします。
✅ 法人設立届
✅ 青色申告承認申請書
✅ 給与支払事業者の届出書
✅ 納期の特例申請書
✅ インボイス登録申請書
✅ e-Tax・eLTAXのID代理取得
手続き完了後は、すべての提出控えをPDFデータでお渡しします。
※消費税の有利不利判定や、税務判断を含むご相談は別途費用となります。
<注意点>
- 本サービスは、税務届出に特化した業務です。税務判断を伴う相談業務は、別途報酬を頂戴する場合がございます。
- 棚卸資産の評価方法など、会計方針に関する届出は1件5,000円(税抜)で承っております。
- 将来の納税額に大きな影響を与える可能性のある届出(消費税簡易課税制度選択届出書など)は、個別にご相談の上で対応いたします。
まとめ
届出の多くは形式的に見えますが、その提出の有無で将来の税額が大きく変わることもあります。
受付印の廃止で提出の証拠が手元に残らない今だからこそ、設立後の税務手続きは慎重に進めましょう。
免責事項
本記事は、法人設立後の税務手続きについて、執筆時点の法令・通達等に基づいて一般的な内容をまとめたものです。
実際の届出書類の記載方法や提出先の判断は、設立形態や地域によって異なる場合があります。
記載内容の個別対応や書類の作成支援については、有償にて承っております。
詳細については、顧問税理士またはお近くの税務署にご確認いただくか、必要に応じて当事務所までお問い合わせください(※ご相談は原則有料対応となります)