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2025.05.13
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資金繰りとお金の見える化のすすめ~黒字倒産を防ぐためにできること~【経営管理編2】

はじめに:黒字なのに倒産する?

会社は、利益が出ていれば安心だと思っていませんか?
実は、帳簿上は黒字でも、資金が足りずに倒産してしまうケースがあります。これを「黒字倒産」といいます。

たとえば、売上は順調でも、実際の入金は数か月後。一方で仕入れや人件費、税金の支払いは待ってくれません。こうしたタイミングのズレによって、手元の資金が尽きてしまうことがあるのです。

このような事態を防ぐには、「今いくらあるか」だけでなく、「これから、いつ・いくら必要になるか」を見通すことが欠かせません。これこそが、資金繰り管理の役割です。

資金繰りとは?

資金繰りとは、お金の出入りを予測して、事前に備えることです。
たとえば以下のような項目を管理します:

  • 売上の入金時期と金額
  • 仕入や外注費、家賃、人件費などの支払予定
  • 税金や借入金の返済
  • 設備投資の予定や突発的な支出の可能性

こうした情報を整理することで、将来の資金残高を見える化し、資金ショートのリスクを回避することができます。

「黒字=納税」「赤字=納税不要」という仕組み

日本の法人税では、黒字が出れば納税の義務がありますが、赤字であれば原則として税金はかかりません。

ただし、「赤字だから安心」と思っていると、大きな落とし穴があります。
赤字が続くということは、会社の利益が出ていない状態が続くということ。つまり、これまでに貯めた利益や資本金といった「会社の財産」を少しずつ使いながら、会社がゆっくりと消耗していくことを意味します。

この状態が長引けば、最終的には資金が尽きてしまい、会社は「自然に閉じる(クローズド)」方向へ向かいます。
「赤字=税金ゼロで得をしている」わけではなく、「少しずつ自分の体を削って生きている」ような状態だと考えてください。

節税が資金繰りを悪化させることもある

利益が出ると「できるだけ税金を減らしたい」と考えるのは自然なことです。
しかし、節税のために本来不要な備品や物品を購入してしまうと、資金繰りに悪影響が出ることがあります。

一時的に税金は減っても、会社のお金を浪費してしまっては本末転倒です。
節税を優先するあまり、将来の資金不足を招いてしまうケースも少なくありません。

健全な節税とは、納税予測に基づいて、

  • 現在本当に必要な設備投資
  • 将来に向けた戦略的な支出
  • 倒産防止共済などによる課税の繰延

といった「会社を強くするお金の使い方」を選ぶことです。

税金をふくめた資金計画の重要性

税金の支払いは、多くの場合「事後」にやってきます。
「決算が終わってから知った」「予想よりも高かった」ということが起こると、資金繰りに大きな影響を及ぼします。

当事務所では、年内の利益見込みをもとにした納税予測を行い、早い段階で税金の概算額をお伝えしています。
これにより、無理のない納税と計画的な投資判断が可能になります。

おわりに

資金繰りの管理は、経営の土台を整える作業です。
節税だけを考えるのではなく、「会社にとって何が必要か」「将来に向けた準備ができているか」を冷静に見つめ直すことが、安定した経営につながります。

また、そもそも「利益が出る前」から節税ばかりを意識している方も見受けられますが、本来優先すべきは利益をしっかり出すことです。
利益が出なければ、そもそも節税の必要すらありません。
そして、利益を安定して出すためには、売上や経費の予測を立てて計画的に行動する「予実管理」などが有効です。

この「予実管理」については、次回のコラムでくわしくご紹介します。
「会社の数字をもっと活かしたい」「経営の見える化をしたい」とお考えの方は、ぜひ次のコラムもご覧ください。

なお、当事務所では、資金繰りや納税予測に関するご相談も承っております。ご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

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