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税理士が徹底比較|個人事業主と法人設立、どっちが得?メリット・デメリットから選び方まで解説【開業・創業編1】
【税理士が徹底比較】個人事業主と法人設立、どっちが得?メリット・デメリットから選び方まで解説
「自分のアイデアで事業を始めたい!」
そう決意したとき、多くの人が最初に直面するのが「個人事業主としてはじめるか、法人を設立するか」という問題です。
自由な働き方、収入アップ、キャリア形成など、創業の目的は人それぞれ。しかし、事業形態の選択は、将来の税金、信用力、事業の成長性に大きく影響します。
そこで今回は、創業を考えるあなたのために、「個人事業主」と「法人(株式会社)」のどちらが適しているのか、メリット・デメリットを徹底比較し、専門家の視点から「あなたに合う」選択肢を解説します。
一目でわかる!個人事業主と法人(株式会社)の違い
まずは、両者の違いを一覧表で見てみましょう。
比較項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社) |
---|---|---|
設立・開業の手間 | 簡単 (税務署に開業届を提出するだけ) |
複雑 (定款作成、登記、社会保険・税務手続きなどが必要) |
設立コスト | ほぼ0円 | 約25万円~ (定款認証や登録免許税など) |
社会的信用度 | 法人に比べて低い傾向 | 高い (取引や採用、融資で有利) |
責任の範囲 | 無限責任 (事業の負債は全財産で負う) |
有限責任 (原則、出資額の範囲で責任を負う) |
資金調達 | 融資のみ | 融資に加えて「出資」も可能 |
会計・税務申告 | 比較的シンプル | 複雑で、税理士への依頼が一般的 |
税率 | 所得税(5~45%) ※累進課税 |
法人税(約15~23.2%) ※所得に応じて変動 |
節税の選択肢 | 限定的 | 役員報酬や退職金など、選択肢が豊富 |
社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 健康保険・厚生年金に強制加入 |
赤字の場合の税金 | 所得がなければ所得税・住民税はかからない | 赤字でも法人住民税(均等割)が最低約7万円発生 |
事業承継 | 手続きが煩雑になりがち | 株式の相続でスムーズに行える |
廃業の手間 | 簡単 (廃業届を提出するだけ) |
複雑 (清算手続きに時間と費用がかかる) |
【税理士が解説】あなたはどっち?3つの判断基準
表を見ても「じゃあ、自分はどっち?」と悩んでしまいますよね。
ここでは、あなたがどちらを選ぶべきか、3つの判断基準をご紹介します。
判断基準1:売上・利益の見込み
一つの目安は「年間の利益(所得)が800万円を超えるか」です。
個人の所得税は利益が上がるほど税率も高くなる「累進課税」です。利益が800万円~900万円を超えると、個人の税率が法人税率を上回る「タックス・クロス」が起こり、法人の方が税負担上有利になるケースが多くなります。
- スモールスタートしたい、利益がそこまで見込めない → 個人事業主
- 初年度から高い利益が見込める → 法人
判断基準2:取引先や事業内容
誰と、どのようなビジネスをするかも重要なポイントです。
- 一般消費者向け(BtoC)の事業、許認可が不要 → 個人事業主
- 大企業や官公庁と取引したい(BtoB)、建設業など許認可で法人が必須 → 法人
法人でないと契約しない、という企業は今でも少なくありません。社会的信用度が求められる事業なら、法人設立を検討しましょう。
判断基準3:将来のビジョン
事業をどこまで大きくしたいですか?
- まずは副業から、自分のペースで働きたい → 個人事業主
- 積極的に資金調達して事業を拡大したい、従業員を雇いたい → 法人
エンジェル投資家からの「出資」や、複数の人で事業を行う場合は、法人格が必須となります。
まとめ:あなたに合ったスタイルで、最適なスタートを
個人事業主と法人のどちらが良い・悪いということはありません。あなたの事業計画や将来のビジョンに合わせて、最適な形態を選ぶことが成功への第一歩です。
- 個人事業主がお勧めな方: まずは手軽にスモールスタートしたい方。初期費用や維持費を抑えたい方。
- 法人設立がお勧めな方: 社会的信用を重視し、将来的に事業を大きく成長させたい方。節税も視野に入れたい方。
なお、最初は個人事業主として始め、事業が軌道に乗ったタイミングで法人化する「法人成り」という選択肢も非常に有効です。
次回のコラムでは、この「法人成り」で得られる節税効果について詳しく解説する予定です。
「自分の場合はどっちだろう?」「具体的な設立手続きが知りたい」
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