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「利益は出ているのにお金がない」はなぜ?黒字倒産を防ぐ資金繰り改善と「お金の見える化」を税理士が解説|経営管理編2
はじめに:決算書は黒字なのに、なぜかお金が足りない…
「決算書上は利益が出ているはずなのに、なぜかいつも資金繰りが厳しい…」
もし、そう感じているなら、それは「黒字倒産」の危険信号かもしれません。
黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ていても、手元の現金(キャッシュ)が不足し、仕入れ代金や人件費、税金などの支払いができなくなって倒産してしまう状況を指します。
なぜこんなことが起こるのでしょうか?
最大の原因は、売上の入金と経費の支払いの「タイミングのズレ」です。例えば、商品は売れたものの、その代金が実際に入金されるのは2ヶ月後。しかし、仕入れ先への支払いや従業員の給与は、待ってくれません。
このズレを放置すれば、会社の体力は静かに削られていきます。
そうした事態を未然に防ぎ、「会社にしっかりとお金を残す」ために不可欠なのが、資金繰りの管理と「お金の見える化」なのです。
本コラムでは、黒字倒産のリスクから会社を守るための、資金繰りの基本と実践的なポイントを解説します。
「黒字倒産」の正体は資金ショート!まずは資金繰りを理解しよう
資金繰りとは、難しく考える必要はありません。シンプルに言えば「会社の現金の出入りを管理し、将来のお金の流れを予測すること」です。
具体的には、以下の項目を把握し、一覧表(資金繰り表)などで管理します。
- お金の入り(収入)
- 売掛金の入金予定(いつ、どの取引先から、いくら入るか)
- 借入金や補助金の入金
- お金の出(支出)
- 買掛金・未払金の支払い予定(いつ、どの取引先に、いくら払うか)
- 人件費、家賃、水道光熱費などの固定費
- 税金(法人税、消費税など)の納税
- 借入金の返済
これらの情報を整理することで、「来月末には資金が〇〇円不足しそうだ」といった未来を予測できます。資金ショートという最悪の事態を、問題が起こる前に察知し、先手を打つことが資金繰り管理の最大の目的です。
赤字経営の隠れたリスクとは?「税金ゼロ=お得」ではない理由
日本の法人税は、利益(黒字)に対して課税されるため、赤字の年度は原則として納税義務が発生しません。
これだけ聞くと、「赤字なら税金を払わなくて済むから、その方が得だ」と感じるかもしれません。
しかし、これは非常に危険な考え方です。
赤字が続くということは、事業で利益を生み出せていないということ。つまり、過去に蓄えた内部留保や資本金といった「会社の純資産」を切り崩して、事業を継続している状態に他なりません。
これはまるで、「自分の体を少しずつ削って生き延びている」ようなもの。この状態が続けば、会社の体力はいずれ尽きてしまい、倒産へと向かってしまいます。「税金ゼロ」は、決して得をしているわけではないのです。
要注意!その節税対策、資金繰りを悪化させていませんか?
利益が出ると、「少しでも税金を安くしたい」と考えるのは経営者として当然の心理です。
しかし、その方法を間違えると、かえって会社の首を絞めることになりかねません。
よくある失敗が、節税のためだけに、本来は不要な物品やサービスを購入してしまうケースです。
- 決算間際に慌てて使い切れないほどの備品を買う
- 将来使う予定のない高額なPCや車両を購入する
これでは、目先の税金は減らせても、会社から大切な現金が流出するだけで、本末転倒です。その支出が、将来の資金不足の引き金になることさえあります。
私たちが推奨する「健全な節税」とは、納税予測に基づき、会社の成長につながるお金の使い方を選ぶことです。
- 戦略的な設備投資:生産性向上に必要な機械を導入する
- 未来への投資:人材育成や広告宣伝に費用をかける
- リスクへの備え:経営セーフティ共済(倒産防止共済)などを活用し、将来の万が一に備えつつ、課税を繰り延べる
目先の税額だけに囚われず、その支出が「会社を強くする投資」になるかどうかを冷静に判断することが重要です。
健全な経営の鍵は「納税予測」。計画的な資金管理を
税金の支払いは、多くの場合、決算が締まった後にやってきます。
「思ったより納税額が多くて、資金のやり繰りに困ってしまった…」というご相談は、後を絶ちません。
こうした事態を防ぐため、当事務所では、決算月の数ヶ月前から利益の見込みを算出し、納税額がいくらになるかを予測する「納税予測サービス」に力を入れています。
早い段階で納税額の概算を把握できれば、
- 納税資金を計画的に準備できる
- 無理のない範囲で、効果的な節税策や投資を検討できる
- 精神的な余裕をもって、本業に集中できる
といった大きなメリットがあります。
私たち専門家は、単に税金計算をするだけではありません。納税も含めた資金計画を共に考え、経営の安定化をサポートするパートナーです。
おわりに:会社の成長は、どんぶり勘定からの卒業から
資金繰りの管理は、人間でいえば日々の健康管理のようなもの。経営の土台を整える、非常に重要な作業です。
目先の節税だけに目を向けるのではなく、「会社にとって本当に必要なものは何か」「未来のためにどんな準備をすべきか」を考えることが、持続的な成長につながります。
また、そもそも利益を出す前から過度な節税を意識する方もいらっしゃいますが、ビジネスの基本はまず利益を確保することです。利益がなければ、節税を考える必要すらありません。
安定して利益を生み出し、会社にしっかりとお金を残していくためには、売上や経費の計画を立て、実績と比較・分析する「予実管理」が極めて有効です。
この「予実管理」については、次回のコラムで詳しくご紹介します。
「会社の数字をもっと経営に活かしたい」「どんぶり勘定から脱却したい」とお考えの方は、ぜひ次回のコラムもご覧ください。
当事務所では、経験豊富な税理士が、貴社の状況に合わせた資金繰りの改善や納税予測をサポートいたします。
このようなご要望はございませんか?
- 自社の資金繰りの問題点がどこにあるか知りたい
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- 専門家と一緒に、お金の計画を立てていきたい
まずはお気軽にご相談ください。貴社の経営の「見える化」をお手伝いします。