COLUMN
コラム
法人設立に関わる税理士が感じる注意点
確定申告が終わるこの時期になると、個人事業主の方の中には
「売上も増えてきたので会社にした方がよいだろうか」
「法人成りを検討している」
と考え始める方もいらっしゃると思います。
もっとも、利益水準や事業の状況によっては、法人成りが必ずしも有利になるとは限らず、場合によっては不利になるケースもあります。
そのため、法人成りの判断については専門家である税理士に相談されることをおすすめします。
(法人成りのご相談をご希望の方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
なお、個別相談は有償にて承っておりますが、顧問契約に至った場合には相談料の一部をキャッシュバックさせていただいております)
今回は法人成りの是非そのものではなく、いざ会社設立を行う際の注意点について、実務の中で感じることをお話ししたいと思います。
会社設立は簡単になったが…
最近は、マネーフォワードやfreeeなどのサービスを利用することで、比較的簡単に会社設立ができるようになりました。
一方で、このようなサービスは登記手続きそのものを行うことが目的であるため、司法書士などの専門家が個別に内容を確認する形ではないことも多くあります。
そのため、実務では議決権割合など重要な事項が、なんとなくの感覚で決められているケースを見かけることもあります。
名古屋や岡崎など愛知県内でも、個人事業から法人化を検討される方や、新たに会社を設立される方が増えている印象があります。
実際、当事務所でも名古屋や岡崎を中心に、遠方の会社を含め法人設立時の税務届出の提出や設立1期目からの支援に関わることがあります。
ご縁があり、この2年間でおよそ10件近い法人設立に関する税務届出の提出に携わってきました。
(なお、当事務所ではマネーフォワードやfreeeなどのサービスを利用して会社設立をされる場合でも、今回お話ししているような基本的な注意点については一般論としてご説明するようにしています。)
会社設立のハードルが下がったこと自体は良いことだと思います。
一方で、実務の中では会社設立の意味や影響を十分に理解しないまま設立されているケースも少なくないと感じています。
今回のコラムでは、会社設立の際によく見かけるポイントとして
・議決権割合
・決算日の考え方
についてお話したいと思います。
意外と多い議決権割合の問題
会社設立の際、出資割合(株式割合)をあまり意識せず決めてしまうケースを見かけることがあります。
例えば、共同で事業を始める際に
「とりあえず半分ずつ」
という形で株式を持つケースです。
弁護士の先生とお話しした際にもこの話題になったことがありますが、
「議決権割合に注意して設計していても、揉めるときは揉める」
というお話でした。
確かにその通りかもしれません。
ただ、税理士として実務の話を聞いていると、最初は仲が良くても、数年後に見解の相違が生じるケースが少なくないと感じます。
会社では重要な事項について株主総会の決議が必要になります。
内容によっては
・普通決議
・特別決議
などがあり、議決権割合によっては何も決められなくなる可能性もあります。
株式割合の設計は、単なる出資割合ではなく、将来の経営判断にも影響する重要な要素です。
会社設立の際には、会社法に詳しい司法書士などの専門家に一度相談されることをおすすめします。
会社の決算日はいつでもよい
もう一つ、よくあるご相談が決算日の決め方です。
「個人事業主が12月決算だから会社も12月決算にしたい」
あるいは
「会社は3月決算が多いと聞いた」
という理由で決められるケースがあります。
結論から言えば、決算日は基本的にいつでも構いません。
確かに、日本では3月決算の会社が多いですが、これは国や自治体の会計年度が4月から翌年3月までであることが影響しています。
しかし、業種によっては別の決算月を選ぶ企業も多くあります。
例えば百貨店では、2月決算が多いと言われています。
これは正月商戦や春の新生活需要などの繁忙期を避け、比較的落ち着いた時期に決算を迎えるためと考えられています。
つまり決算日は、単に慣習で決めるのではなく
・事業の繁忙期との関係
・インボイス制度の特例との関係
なども考えて決めることが望ましいと言えます。
例えばインボイス制度の特例を利用する場合、特例の適用期間の関係で決算日によって税額が変わるケースもあり、結果として節税につながる場合もあります。
1年目は短期決算でも問題ない
もう一つ誤解されやすいのが、会社設立初年度の決算期間です。
会社設立のタイミングによっては、初年度の決算期間が半年程度になることがあります。
そのため
「1年未満だと損なのではないか」
と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、税金は基本的に月数に応じて計算されるため、短期決算だからといって必ずしも不利になるわけではありません。
むしろ按分計算の関係で、結果として多少有利になるケースもあります。
デメリットがあるとすれば、決算が早く来るため税理士の決算報酬が早めに発生することくらいでしょうか。
なお、当事務所では短期決算の場合には、一定の料金調整を行うこともあります。
個人事業から法人成りする場合の注意点
個人事業から法人へ移行する場合には、もう一つ注意点があります。
例えば、確定申告が終わった後に会社を設立するケースです。
この場合
・1月1日から会社設立日まで → 個人事業の所得
・会社設立日以降 → 法人の所得
という形になります。
つまり、その年は
個人の確定申告と法人決算が並行して発生する可能性がある
という点には注意が必要です。
会社設立はスタート
会社設立はゴールではなく、むしろスタートです。
最近は会社設立の手続き自体は簡単になりましたが、設立後の運営には
・税務
・会計
・社会保険
・法務
など様々な実務が関わってきます。
名古屋や岡崎など愛知県内でも、法人設立後の税務届出や会計体制の整備についてご相談をいただくことがあります。
会社設立の段階で一度専門家に相談しておくことで、将来のトラブルを防ぐことにもつながります。
当事務所では、法人設立後の税務届出や会計体制の整備についてのご相談のほか、必要に応じて信頼できる司法書士など他士業のご紹介も可能です。
次回予告
次回は、会社設立後に意外と多い問題として
出資金と会社資金の管理
についてお話します。
免責事項
本コラムは、税務実務の観点から会社設立に関する一般的な注意点を紹介するものです。
個別の事情によって適切な対応は異なる場合がありますので、具体的な判断については専門家へご相談ください。
特に、会社設立時の株式割合や議決権の設計など会社法に関する事項については、会社法に詳しい司法書士などの専門家に確認されることをおすすめします。
また、本記事の内容は掲載時点の一般的な情報をもとに作成しており、制度変更等により内容が変更される可能性があります。