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法人成りの注意点【開業・創業編2】
「知り合いの社長が法人成りして後悔している。」そういう風に信用金庫の担当者さまから相談をされたことがあります。具体的にお話を聞くと、納税額が増加・社会保険料負担義務の発生・その他固定費が大きくなり、キャッシュが厳しくなると聞きます。ではなぜそのような現象が生じてしまうのでしょうか。今回のコラムでは法人成りを検討する際注意すべき事項をまとめます。
なお、新規開業時に個人事業主ではじめるか、法人ではじめるかは前回のコラムをご参照ください。
お断り。今回のコラムは個人事業主と、資本金1,000万円以下の中小法人を比較対象としています。特段の注意書きがない限り、税務上の費用すなわち必要経費及び損金を示しています。本投稿は令和7年3月20日現在の税制度をもとに執筆しています。
生ずる税金の比較
項目 | 個人事業主 | 法人 |
---|---|---|
費用の幅(※1) | 限定的(家事按分などに制限あり) | 役員報酬・退職金・保険料 など幅広く費用計上可能 |
住民税 | 赤字であれば発生しないことも。 | 赤字でも年間7万円程度の均等割が発生 |
赤字の繰越控除 | 3年間 | 10年間 |
税率(所得税及び法人税の税率) | 所得税 最小5% 最大45% | 法人税 所得年800万円以下:15% 800万円超 :23.2% |
社会保険の負担(※2) | 国民健康保険+国民年金(所得に応じた負担) | 社会保険(健康保険+厚生年金) |
このように、法人税の場合、最大税率は23.2%であり、所得税の45%を下回るほか、経費にできる項目が増えることになります。具体的に費用項目について比較します。
費用項目の検討
項目 | 個人事業主 | 法人 |
---|---|---|
交際費 | 交際費として、金額の限度額がない。 | 年間800万超になると、超過した分は費用として認められない。 |
生命保険 | 掛金を経費とすることができない。ただし、年間最大12万円までを所得控除として計上できる。 | 従業員や役員にかけた生命保険料の一定割合が費用となる。 |
出張日当 | 従業員に対する支払のみ経費計上可能(自分自身には支払えない)。 | 従業員にも役員にも支払うことができる(同族会社の場合は、取り扱い注意)。 |
給与 | 自分自身への給与は費用として認められない。 | 役員への報酬は、原則として費用計上が可能。 |
退職金 | 自分自身への退職金は費用として認められない。 | 役員退職金も、社会通念上の金額であれば費用計上が可能。 |
法人は役員に対し、給与や退職金を支給することができます。
この結果、個人事業主の際適用ができなかった給与所得控除が認められます。また個人事業主の利益相当額を給与に置き換えることによって、事業によって生ずる利益がなくなるため、個人事業主として事業税が発生しなくなります。(ただし利益幅によっては社会保険料が膨大なる可能性に注意が必要です。)
経営セーフティ共済(倒産防止共済)は個人事業主でも法人でも加入することができます。掛金を必要経費又は損金とすることができます。しかし、解約時は全額利益計上する必要があります。一部解約も認められません。したがって、将来にわたって業績が順調であることが予想されるのであれば、いずれ行う解約時の発生する利益に対し、莫大な納税が発生する可能性があり、出口戦略を慎重に検討する必要があります。
(節税商品は課税の繰延であることが多く、いずれ納税が発生します。この場合、出口戦略を検討する必要があります。例えば、生命保険を用いた養老保険の積立等も同様です。)
役員が会社を退職する場合、退職金を支給することができます。退職金は会社からすれば膨大な費用及びキャッシュアウトの発生が予想されます。これに対し、経営セーフティ共済や生命保険の解約金を同時期に受け取ることによって、退職金の支出による費用と、解約による利益の相殺により退職時の納税額を減らす(又は赤字幅を小さくする)ことができます。
このように給与を支給することや、節税商品を上手に利用することにより、個人事業主では認められなかった費用計上が認められる可能性があります。
税率の検討
費用の計上が変わらない場合、所得ベースで7,950,000円の時、個人事業主として支払う所得税と、会社として支払う法人税は同額となります。
所得 | 所得税 | 法人税 |
---|---|---|
4,000,000円 | 372,500円 | 600,000円 |
6,000,000円 | 772,500円 | 900,000円 |
8,000,000円 | 1,204,000円 | 1,200,000円 |
10,000,000円 | 1,764,000円 | 1,500,000円 |
12,000,000円 | 2,424,000円 | 1,800,000円 |
このように利益ベースのみで考えると8,000,000円が検討ラインに上がることがわかります。
まとめ
今回の記事は法人成りを検討する際注意すべき事項を表グラフにしました。
実際には法人成りすることによって、今までの利益が給与に変わり、これまで発生していた個人事業税が発生しなくなったが、社会保険料の負担額が大きくなったなど、メリット・デメリットがあります。
目先の納税額のみだけではなく、将来を見越した検討が必要です。
当事務所は将来を見越した法人成りの提案が可能です。詳細はお問い合わせください。