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A1-7|レシートと領収書の違い|法人経理で誤解しやすいポイントと正しい処理
はじめに:よくある質問
「レシートがあれば領収書はいらない?」「法人カードの利用明細書って経費の証憑になる?」──こうした疑問は、経営者や経理担当者から非常によく寄せられます。
結論:レシートは領収書の代わりとして十分な証拠能力があります。一方、法人カードの売上票や利用明細書は単体では経費の証明として不十分です。さらに、両方もらった場合に「どちらか捨ててよいか?」という質問については、実務上は両方残しておくのが安全です。
本記事では、税務調査で損をしないために押さえておきたい「レシート・領収書・クレジットカード売上票」の違いと、正しい証憑管理の方法を税理士の立場から解説します。
レシート・領収書・法人カード売上票の違い【比較表】
書類の種類 | 証明できること | 証拠としての強さ |
---|---|---|
レシート | 取引の詳細(いつ、どこで、何に、いくら) | 非常に高い(最強の証拠) |
領収書 | 金銭の受領事実(いつ、誰が誰に、いくら) | 高い(ただし内容が抽象的な場合も) |
クレジットカード売上票 | 決済の事実(いつ、どこで、どのカードで、いくら) | 単体では不十分 |
1. レシート:最も有効な証憑
レシートには購入品目が明細として記載されるため、第三者に対して「事業経費であること」を客観的に証明できます。セルフレジでも有人レジでも、まずはレシートを発行して保管することをおすすめします。
2. 領収書:宛名入りで補足的に活用
領収書は「誰が誰に支払ったか」を証明する書類です。会社の経理規程で宛名入りを求められる場合や、高額取引では領収書が有効です。ただし内容は抽象的になりやすいため、基本はレシート+必要に応じて領収書という位置づけが望ましいです。
3. クレジットカード売上票・利用明細は不十分
法人カードで決済すると「売上票」や「利用明細書」が残りますが、これらは決済した事実にとどまります。経費の中身を示す証拠にはなりません。必ずレシートや領収書と併せて保管してください。
【特に注意】交際費の証憑は「+αの記録」が必須
- 会食等の年月日
- 相手先の会社名・氏名・関係性
- 参加人数
- 支出目的(接待・打合せなど)
レシートや領収書だけでは不十分です。裏面に手書きメモをする、または経費精算アプリに入力するなど「+αの情報」を残してください。
【ケース別対応】レシートを紛失したら?
- 店舗に連絡して再発行を依頼する
- 再発行不可なら「出金伝票」「仮払精算書」を起票
- カード利用明細や振込記録など、支払いの裏付け資料を併せて保管
まとめ:証憑管理のポイント
- 最強の証拠はレシート(セルフレジ・有人レジともに優先)
- 法人カード明細は補助的で、単独では不十分
- 交際費は「+αの記録」を必ず残す
- レシートと領収書を両方受け取ったら、両方保存するのが無難
FAQ:よくある質問
Q. レシートと領収書を両方もらった場合、片方は捨ててもいいですか?
実務上は両方保存してください。レシートは「内容」を、領収書は「宛名や受領事実」を示します。両方あることで安全性が高まります。
Q. セルフレジや有人レジでは、どちらを選ぶべきですか?
必ずレシートを選んでください。購入内容が明細で残るため、経費証拠として最も有効です。領収書が必要な場合は、有人レジで宛名入りを発行してもらい、レシートと併せて保管しましょう。
Q. クレジットカード明細だけでも経費にできますか?
できません。必ずレシートや領収書とセットで保管してください。
Q. 交際費の証憑で最も重要なポイントは?
「誰と」「どんな目的で」支出したかを残すことです。レシートや領収書に加えてメモを残すことが重要です。
税理士からのご案内(当事務所の支援範囲)
当事務所では経費精算規程そのものの作成は行いませんが、以下のような実務的な運用支援が可能です。
- マネーフォワードやfreeeを利用した経費承認フローのルール化
- レシート/領収書を会計ソフトへ正しく反映する方法の指導
- クラウド会計と経費精算アプリの連携による効率化
クラウドツールを活用することで証憑の管理がシンプルになり、経理担当者の負担も大幅に減らせます。お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な解説であり、個別の事案に対する助言ではありません。具体的な対応は顧問税理士へご相談ください。