COLUMN
コラム

2025.09.11
コラム

A1-7|レシートと領収書の違い|法人経理で誤解しやすいポイントと正しい処理

はじめに:よくある質問

「レシートがあれば領収書はいらない?」「法人カードの利用明細書って経費の証憑になる?」──こうした疑問は、経営者や経理担当者から非常によく寄せられます。

結論:レシートは領収書の代わりとして十分な証拠能力があります。一方、法人カードの売上票や利用明細書は単体では経費の証明として不十分です。さらに、両方もらった場合に「どちらか捨ててよいか?」という質問については、実務上は両方残しておくのが安全です。

本記事では、税務調査で損をしないために押さえておきたい「レシート・領収書・クレジットカード売上票」の違いと、正しい証憑管理の方法を税理士の立場から解説します。

レシート・領収書・法人カード売上票の違い【比較表】

書類の種類証明できること証拠としての強さ
レシート取引の詳細(いつ、どこで、何に、いくら)非常に高い(最強の証拠)
領収書金銭の受領事実(いつ、誰が誰に、いくら)高い(ただし内容が抽象的な場合も)
クレジットカード売上票決済の事実(いつ、どこで、どのカードで、いくら)単体では不十分

1. レシート:最も有効な証憑

レシートには購入品目が明細として記載されるため、第三者に対して「事業経費であること」を客観的に証明できます。セルフレジでも有人レジでも、まずはレシートを発行して保管することをおすすめします。

2. 領収書:宛名入りで補足的に活用

領収書は「誰が誰に支払ったか」を証明する書類です。会社の経理規程で宛名入りを求められる場合や、高額取引では領収書が有効です。ただし内容は抽象的になりやすいため、基本はレシート+必要に応じて領収書という位置づけが望ましいです。

3. クレジットカード売上票・利用明細は不十分

法人カードで決済すると「売上票」や「利用明細書」が残りますが、これらは決済した事実にとどまります。経費の中身を示す証拠にはなりません。必ずレシートや領収書と併せて保管してください。

【特に注意】交際費の証憑は「+αの記録」が必須

  • 会食等の年月日
  • 相手先の会社名・氏名・関係性
  • 参加人数
  • 支出目的(接待・打合せなど)

レシートや領収書だけでは不十分です。裏面に手書きメモをする、または経費精算アプリに入力するなど「+αの情報」を残してください。

【ケース別対応】レシートを紛失したら?

  • 店舗に連絡して再発行を依頼する
  • 再発行不可なら「出金伝票」「仮払精算書」を起票
  • カード利用明細や振込記録など、支払いの裏付け資料を併せて保管

まとめ:証憑管理のポイント

  • 最強の証拠はレシート(セルフレジ・有人レジともに優先)
  • 法人カード明細は補助的で、単独では不十分
  • 交際費は「+αの記録」を必ず残す
  • レシートと領収書を両方受け取ったら、両方保存するのが無難

FAQ:よくある質問

Q. レシートと領収書を両方もらった場合、片方は捨ててもいいですか?

実務上は両方保存してください。レシートは「内容」を、領収書は「宛名や受領事実」を示します。両方あることで安全性が高まります。

Q. セルフレジや有人レジでは、どちらを選ぶべきですか?

必ずレシートを選んでください。購入内容が明細で残るため、経費証拠として最も有効です。領収書が必要な場合は、有人レジで宛名入りを発行してもらい、レシートと併せて保管しましょう。

Q. クレジットカード明細だけでも経費にできますか?

できません。必ずレシートや領収書とセットで保管してください。

Q. 交際費の証憑で最も重要なポイントは?

「誰と」「どんな目的で」支出したかを残すことです。レシートや領収書に加えてメモを残すことが重要です。

税理士からのご案内(当事務所の支援範囲)

当事務所では経費精算規程そのものの作成は行いませんが、以下のような実務的な運用支援が可能です。

  • マネーフォワードやfreeeを利用した経費承認フローのルール化
  • レシート/領収書を会計ソフトへ正しく反映する方法の指導
  • クラウド会計と経費精算アプリの連携による効率化

クラウドツールを活用することで証憑の管理がシンプルになり、経理担当者の負担も大幅に減らせます。お気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な解説であり、個別の事案に対する助言ではありません。具体的な対応は顧問税理士へご相談ください。