COLUMN
コラム
特定創業支援等事業をご存じですか?【開業・創業編3】
~創業時にこそ知っておきたい「制度の特典」と「注意点」~
これから会社を立ち上げる方や、すでに創業間もない方にとって、「特定創業支援等事業」という制度は非常に有益なものです。
特に、会社設立にあたってかかる登録免許税の軽減や、融資面での優遇など、金銭的メリットを享受できるため、うまく活用すれば初期コストを抑える大きな武器となります。
今回はこの制度の概要と、利用にあたっての注意点について解説いたします。
■ 特定創業支援等事業とは?
市区町村が、国(経済産業省)の認定を受けて実施する創業支援制度です。
「経営」「財務」「人材育成」「販路開拓」の4分野すべてを含む支援を、原則として「1か月以上の期間で4回以上」受けることで、市町村から「支援証明書」が交付されます。
たとえば、岡崎市や名古屋市では、商工会議所や金融機関などが実施する「創業塾」や「創業セミナー」などが対象となっており、これらのカリキュラムを通じて必要な支援を受けることが可能です。
多くの創業塾やセミナーは無料で参加できるものも多く、これから起業を検討されている方にとっては、情報収集の場としても有益です。
なお、名古屋市では「スタートアップ補助金」などの創業支援補助金が設けられている一方、岡崎市では現時点(2025年6月時点)ではそうした補助金制度は確認されていません。
そのため、直接的な補助金が得られない地域では、登録免許税の軽減や信用保証枠の優遇などが受けられる「特定創業支援等事業」の活用が、少しでも資金繰りを良くするための現実的な手段となります。
また、創業塾等を通じて経営や財務の知識を身につけることも、会社経営を軌道に乗せるうえで大きな武器となるため、当事務所では補助金のない地域ほど積極的な受講をおすすめしています。
■ 制度を活用すると何が得か?
支援証明書を取得することで、以下のような特典を受けることができます:
- 株式会社設立時の登録免許税が軽減
→ 通常「資本金の0.7%(最低15万円)」が、**0.35%(最低7.5万円)**に軽減 - 信用保証枠の優遇
→ 創業関連保証の別枠(無担保・第三者保証人なし)を利用できる可能性あり - 補助金等の加点対象となる場合がある
→ 小規模事業者持続化補助金などで有利になるケースも
創業期は資金繰りに余裕がないことも多いため、こうした特典は実務上も大きなメリットです。
■ 注意点:「創業」が前提です。法人成りは対象外となる場合も
この制度はあくまで**「新たな創業」を支援する仕組み**です。
したがって、すでに個人事業として事業を行っていた方が法人化する「法人成り」の場合は、対象外と判断される可能性があります。
当事務所では、名古屋市および岡崎市の担当窓口に直接確認を行いましたが、いずれの市でも「法人成りの場合は、登録免許税の軽減などの特典が適用されない可能性がある」との説明を受けました。
ただし、お客様の状況により判断されるそうで、一律の基準があるかどうかは確認できませんでした。
また、この取り扱いは市町村によって異なるため、制度の活用を検討される場合は、必ず事前に自治体の窓口に確認されることを強くおすすめします。
■ 申請要件にも注意。短期集中ではNG
「4回受講すればいい」と思われがちですが、実際には原則「1か月以上の期間をかけて4回以上の支援を受ける」ことが条件とされています。
そのため、1週間程度で連続してセミナーを受講しても要件を満たさない場合があり、制度の趣旨に反する形になります。
「すぐにでも会社を設立したい」とお考えの方にとっては、スケジュール面での制約になる可能性もあるため、制度を活用したい場合は早めに情報収集し、計画的に受講日程を組むことが重要です。
また、この制度の特典は、株式会社や合同会社などの「普通法人」に限られており、一般社団法人・一般財団法人・NPO法人などは対象外となりますので、法人の形態を選ぶ際にも注意が必要です。
■ 最後に:制度の活用は「知っているかどうか」で差がつきます
創業支援制度は多岐にわたりますが、「特定創業支援等事業」は比較的手軽に利用でき、かつ実務上のメリットが大きい制度です。
ただし、利用にはタイミングや法人形態、受講形式などに条件があるため、申請準備には一定の計画性が必要です。
また、法人設立後には「税務署への届出」「社会保険・労働保険の加入手続き」「青色申告承認申請」「源泉徴収義務者の手続き」など、複数の重要な届け出が必要になります。
■ 専門家に依頼できない方へ:最低限の知識がリスク回避に
創業初期は、資金的な余裕がなく、税理士や社労士などの専門家に依頼することが難しい方も少なくありません。
もちろん本音を言えば、税務については顧問契約をいただければ、必要な届出や経理体制の整備も含めて継続的にサポートいたします。
しかし、顧問契約がない場合には、必要な届出に不備や漏れがあっても、後から指摘する形にならざるを得ません。
法人設立後に、実は提出すべき書類が出されていなかったという事例も少なくなく、思わぬ不利益や手続きのやり直しが発生することもあります。
「知らなかった」では済まされない手続きが多いのが会社経営の現実です。
専門家に依頼する余裕がない場合でも、最低限の知識を身につけておくことが、将来の経営リスクを減らす第一歩となります。
【このような方におすすめです】
- これから法人を設立しようとしている方
- 登録免許税を少しでも抑えたい方
- 融資や補助金の申請も視野に入れている方
- 税務・労務・登記など、創業まわりの手続きをまとめて相談したい方
法人設立や創業支援に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。