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【税理士が警鐘】クラウド会計で税務調査?残高不一致や誤仕訳の落とし穴と解決策|クラウド会計編6
クラウド会計ソフトの普及により、誰もが手軽に経理を行える時代になりました。スマホでのレシート撮影、銀行口座との自動連携など、その利便性は絶大です。
私自身も、freeeやマネーフォワードといったクラウド会計の活用を積極的に推奨しており、適切に使えば業務効率化に大きく貢献する素晴らしいツールだと考えています。
しかしその一方で、「クラウド会計だから安心」という過信が、思わぬトラブルを招いているケースも少なくありません。当事務所には、「こんなはずではなかった…」というご相談が後を絶たないのが実情です。
今回は、クラウド会計に潜む「よくある落とし穴」と、将来のリスクを防ぐための具体的な解決策を解説します。
【落とし穴1】預金残高と帳簿の残高が合わない!
「連携しているのに、なぜか銀行残高と帳簿の数字がズレている…」これは最も多いご相談です。
- 主な原因:
1. 現金取引の未入力: 現金で支払った経費(祝儀や一部の交通費など)の入力が漏れている。
2. プライベート支出の未処理: 事業用口座から支払ったプライベートな支出(生活費など)が、「対象外」のまま放置されている。 - 解決策:
帳簿と実際の資金残高は、1円単位で一致するのが大原則です。残高のズレは、入力漏れや誤処理があるサイン。プライベートな支出は「事業主貸」、入金は「事業主借」として正しく処理するルールを徹底しましょう。
【落とし穴2】AIの自動仕訳を信じすぎている!
AIによる勘定科目の自動提案は非常に便利ですが、100%正確ではありません。
- 主な原因:
1. 勘定科目の誤り: AIが提案した科目が、取引の実際の内容と異なっている。
2. 消費税区分の誤り: 本来は「非課税」の取引が「課税」で処理されている、など。 - 解決策:
「AIはあくまでアシスタント」と割り切り、必ず人間の目で最終チェックする習慣をつけましょう。特に、初めての取引先や、いつもと違う内容の取引は要注意です。このひと手間を怠ると、帳簿全体の信頼性が大きく損なわれます。
【落とし穴3】うっかりプライベート支出を経費に!
事業用のクレジットカードで、つい私的な買い物を…これもよくあるケースです。
- 主な原因:
事業用とプライベート用の支出の区別が曖昧になっている。 - 解決策:
うっかりミスが、後々「意図的な経費の水増し(脱税)」と見なされないためにも、対策は必須です。事業用とプライベート用のクレジットカードや口座は、面倒でも完全に分けましょう。それが最も確実なリスク管理です。
【落とし穴4】スマホで撮ったからとレシートを捨ててしまった!
「スマホで撮影したから、もう紙のレシートは要らない」これは危険な誤解です。
- 主な原因:
電子帳簿保存法(スキャナ保存)の厳格な要件を理解していない。 - 解決策:
紙の証憑を破棄するには、タイムスタンプの付与など非常に厳しい要件をクリアする必要があります。要件を満たさない限り、レシートや請求書の原本保管は法律上の義務です。安易に破棄すると、経費として認められなくなるリスクがあります。
あなたの帳簿は大丈夫?セルフチェックリスト
- □ 銀行口座の残高と、クラウド会計上の帳簿残高は一致していますか?
- □ 現金での支払いは、すべて漏れなく入力されていますか?
- □ プライベートな支出を、誤って経費として計上していませんか?
- □ AIが提案した仕訳を、鵜呑みにせず確認していますか?
- □ レシートや請求書の原本は、きちんと保管していますか?
一つでも「いいえ」や「不安」があれば、専門家への相談を検討するサインです。
まとめ:帳簿にも専門家による「定期健診」を
「日々の入力は自分で、申告だけ税理士に」と考える方は多いですが、上記のような落とし穴が積み重なった「とりあえず入力されている帳簿」は、税務申告の基準を満たせず、結局、修正に膨大な時間と追加費用がかかってしまうことが少なくありません。
クラウド会計は、車の運転と同じです。便利な乗り物ですが、正しい知識と定期的なメンテナンスがなければ、思わぬ事故に繋がります。
「自分で入力しているけれど、一度プロに見てほしい」
「このままで大丈夫か、客観的なアドバイスがほしい」
そう感じたら、ぜひ一度、帳簿の「健康診断」を受けてみませんか?問題が小さいうちに対処することが、将来の安心とコスト削減に繋がります。
当事務所は、マネーフォワード公認メンバーおよびfreee認定アドバイザーです。
クラウド会計の導入支援から、日々の運用チェック、記帳代行まで、あなたの状況に合わせた最適な方法をご提案します。「途中からでも大丈夫です」。手遅れになる前に、まずはお気軽にご相談ください。