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コラム
帳簿上の現金残高がズレる理由と対策 ― 現金勘定の見直しを【会計入力編3】
お客様からよくあるご相談
こんにちは。クラウド会計に強い税理士の安藤です。
最近は、会計ソフトのベンダーであるマネーフォワード社やfreee社を通じて、
「自分で入力してみたが、これで正しいのか不安」という相談をいただく機会が増えています。
面談時に帳簿を拝見すると、以下のような状態になっているケースが少なくありません。
- 帳簿上の現金残高がマイナス
- 帳簿上の現金残高が異常に高額
しかし、現金勘定はあくまで「実際に手元にある現金」を示すものです。
帳簿と実際の金庫や財布の現金が一致しているのが本来の姿です。
ズレがあるということは、帳簿に何らかの誤りがある可能性が高いのです。
なぜ現金残高がズレるのか?
主な原因として、以下のようなものが考えられます。
- プライベートと事業用の支出が混在している
- 現金売上の計上漏れがある
- クレジットカードやQR決済による支出を、誤って現金で処理している
- 仕訳の重複入力
- 預金からの引落しが帳簿に未反映
2~5は入力ミスに起因するため、会計ソフトの正しい使い方を理解すれば解消が可能です。
当事務所でもソフトの操作指導を行っています。
問題は「プライベートとの混在」
もっとも厄介なのは、事業用と私用の財布が一緒になっているケースです。
この場合、事業の現金出納状況が不透明となり、帳簿との突き合わせが非常に困難になります。
国税庁の指導はどうなっている?
国税庁では現金出納帳について、以下のような指導を行っています。
- 事業用の現金の出し入れを取引順に記帳する
- 現金出納帳は毎日記帳し、実際の残高と突き合わせる
- 現金・預金・カードは事業用と私用で区別する
- 記帳・現金管理の担当者を定める
つまり、財布・金庫・レジを事業用と私用で分け、日々チェックを行う体制が求められているということです。
現金を扱う業種では「突き合わせ」記録が重要
現金取引が日常的に発生する業種(小売・飲食など)では、金種表などの記録を残すことが推奨されます。
税務調査時にも、突き合わせの証拠として有効です。
なお、レジや金庫から経費精算などの出金を行うと差額の原因になるため、
入金管理専用とし、出金は責任者のみが対応するなど、運用ルールの整備が必要です。
現金勘定を廃止するという選択肢
現実的には「プライベートと完全に財布を分ける」ことが難しい方も多いでしょう。
その場合、思い切って事業では現金を一切扱わないという方針にするのも一つの方法です。
例えば次のような方法があります:
- 法人用(事業用)のクレジットカードを使い、経費精算を不要にする
- 立替払いが必要な場合は、役員や従業員に立て替えてもらい、給与等で一括精算する
このように現金を扱わなければ、帳簿に現金勘定を設ける必要がなく、
帳簿上の残高ズレも起きません。
まとめ:キャッシュレス時代の現金勘定との向き合い方
近年ではキャッシュレス化が進み、現金の出番が減ってきています。
普段から現金をほとんど使わない事業者であれば、現金勘定そのものを廃止することも検討してみてはいかがでしょうか。
免責事項
本コラムは当事務所の見解を含み、すべての納税者に当てはまるとは限りません。
上記の方法に基づき処理を行い、税務調査等で指摘を受けた場合も、当事務所では一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。
※本記事は2025年5月8日に一部内容を更新しています。